創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

一次創作

鉢植え

「敢えて果たす、って書くだろ?」 渡り廊下で交わされる声。移動教室の用意一式を小脇に抱えて連れ立つ。三階の渡り廊下には天井がなく、雨ざらしだ。夏が過ぎ、日差しが和らいだといっても多少のことで、やはり天下に出ると眩しい。目を細める。 また、割…

個体

弟が自分とは別個体であることを、本当の意味で理解した瞬間はどこだっただろうか。顎を伝う汗が、重力に引かれてついに肌を離れたあの時だっただろうか。学校から帰って(部活には入っていなかったし、寄り道をする趣味も持っていなかった)、じわじわと苛む…

本音を吐け

妹の部屋で界隈に頭から突っ込めば中道の程度の糖度で書かれた夢小説の本を手に取った。前から存在には気が付いていたが、自分に損をもたらすことの専らな野次馬根性で中を開く。本文は蕁麻疹がでる危険性を回避のため一切読んでいない。煽り文とあとがきだ…

御都合主義

人間は核心に触れるのを恐れている。哲学に対して本能的ともいえる恐怖を抱き、如何にして日常に持ち込まずにいられるかを真剣に悩んでいる。今夜のメニューのこと、今度の連休でやりたいこと、片付けなければならない家事(特に掃除は都合がよい)、今日出合…

狭間

なにか特別な日だったっけ。 首を傾げるがそんなことをしても脳内の記憶がポロッと心当たりを弾き出してくれるわけでもなく、今度は反対側に首を傾げる。私は考え事をしているとき必然的に目つきが悪しくなるらしく(自覚もある)、こんなときに人と目が合うと…

外灯

「今夜はどこに泊まるの?」 「選んでいいよ。ここらは選択肢が多いから」 幼稚園で指定されている帽子、浅いつばがぐるりと付いている黄色いあれ、を右手で目深に引っ張り、つばの影から年相応に大きな眼が私を見上げる。その視線を避けるようにして私も同…

おはなばたけ

常夜灯は消した。毛布とシーツの間に転んで首まで毛布を引き上げる。毛布の上には羽毛布団を載せている。以前テレビの教養バラエティ番組(という表記で伝わるか?)で毛布の方を上に被せたほうが保温性が高くなると紹介されていたのを思い出す。冬が来るたび…

猥談

人生の未完成を自覚している。仮初の完全を謳うとき、ひとは真に充足する。私はそう考えている。日々への物足りなさ、不甲斐なく怒りが染色しにくる様、浅はかである所業を何一つ許せなくなるだけの余裕の無さ、自己嫌悪。言い方は多種多様である。つまりは…

私小説

どうにかして自分の時間は止まらないだろうか。壊れないだろうか。巻き戻らないだろうか。 秋の空は高いという。雲が地表から高いところに発生するのだ。夏と比べたときの話だ。だから秋の空は高い。高くなったように見える。 あっそ。秋の雲はぼやけていて…

風向き

五ミリ方眼のノートの見開きが文字で埋まった。僕はある程度の満足を感じ、湿った目元を乱雑に拳で拭う。紙面に散らばった消しカスを机の下へ叩いて落とすと、そのノートを小脇に部屋を出た。 階段を下り、玄関でサンダルを突っ掛ける。風が髪を揺らすのを感…

武装

妹は猫を飼いたがっていた。小学生の児童が、親に口約束をきいて、ペットを許されるのと寸分違わぬ流れで、妹は猫を家へ招き入れた。妹は小学生だった。例えにもなっていない。 俺はその時は高校生だった。己の生命を哲学し始めた時分だった。生命の温もりが…

道程開示

人に読ませられるだけの解読可能を持たせられるか不安はありますが、なるたけそれが叶うように調度して書くつもりです。 地平線が見たいような、そんな気持ちです。地球の形を漠と感じたいのかもしれない。案山子のように足を地面に生え忍ばせて、ぐったりす…

暴的定義

僕が言ったことがそんなに面白かったらしい。所詮小学生程度の性知識しか持っていないのだろう。抱腹絶倒の姿を睥睨する。目尻を拭って、余韻冷めやらぬといった様子で息切れを起こし、絶え絶えにコメントを寄越してくれる。 ちゃんと想像してみたか? との…

恋愛小説

恨むなら、私の人生に登場したことを。私が望むと望まぬとに関わらず私の前に現れ出た自分の人生の筋道を。交差して離れなかった互いの人生の絡まりを。恨むなら、それらを恨め。 私は体術など会得していない。きっと相手の方が自分の体の動かし方には詳しい…

第一歩

自分は背伸びをしていたのじゃないか、と疑う。常に冷静でいるつもりなのに、いつの間にやら冷静と遠く離れて奇行を発している、なんてこと。私はごく真剣に取り組んでいるのだが、私のある瞬間、ある行動ひとつを切り取ると、奇行としか判じ得ない姿態を晒…

ギャグの如き人生

俺は喜び多き人生にしたい。誰のものも、自分のも。 「兄さあ、自分が人間嫌いってこと自覚してるの」 下の妹の指摘に家族みんなが揃って笑声を上げる。俺も釣られて苦笑いになる。はは、は…。 「理由はある…俺は」 「自称ヒーローのおとぼけメンヘラ」 …と…

偽悪

騙そうとして言ったことではなかった。そこに故意はなかった。悪意のありようはない、勘違いがすべてだった。私の過失が結果的に嘘の発言を導き、それを周囲に認知させたことは悔いても改められない。吐き気がしてきた。消せるものなら過去に戻って事実を正…

大人

これは寓話。「大人」 少年が大人の腰を越すか越さないかの背丈の頃。少年はよく笑った。周りの大人らはその笑顔を鏡に反射するように柔らかく少年に接し、少年はそれに応えてさらに深く微笑んだ。 少年は身近な愛情を感じ取る力に疎かった。当たり前への感…

挑戦と後悔

庭に出た。日が陰りはじめて空気も大分暑さが和らいだ。特に何を思うわけでもなく、気の向くままに足を伸ばした。コンクリート塀の向こうに畑用地がある。今夏は気張って耕してみたが、暑さに負けて水やりを放棄してからはその有様を見ていなかった。自分の…

落ち葉踏む森

僕は汗をぼたぼた流して走っていた。夏休みが明けて、九月。夏の盛りは過ぎたけれど、日中はまだまだ暑い。体を動かせば、なおさらのこと。すぐにカッターシャツが肌に張り付く。教科書やノートを詰めた学生鞄を背負った背中は蒸し暑く、その重量感もあって…

書き損じ

viorenisist 音楽室にこもりがちだというのは、その学校に通う者ならばみな知っている噂だった。あまりに侵蝕が激しく、新入生もひとつき経てば、噂拡散の媒介人の趣を身に付けてしまうくらいであった。誰も、その噂を広めることに躊躇しなかったが、では何…

生々

前置きしておきたくなるくらいには、センシティブな表現があります。自分の書いた小説の中で群を抜いているいかがわしさ。 ーー 中学の同窓会があった。参加に印を付けて返信はがきを出した。ちょっといいホテルを借りてあって、豪勢な雰囲気でビュッフェ形…

怒り

とことん利己に向かっていいのなら、私は猫になりたい。飼い猫に。去勢だの避妊だの、有性の理から逸脱した存在へ変化できる手術を受けられる、猫になりたい。 この点が満たされるのなら、犬でもいい。 ならば私は被支配されれば叶うのか?それが私のプライ…

身体損壊現象

眼が痒いなと思って指の背で掻いていたら目玉が取れた。親指の第一関節で目頭を押さえたときだった。ずる、と指が滑って、代わりに目尻から溢れるものがあった。初めは涙だろうと思った。涙にしては量が多いと感じたが、日頃パソコン画面の見すぎで眼精疲労…

花火

今夜は花火の上がる日だった。僕は努めて冷静であることを何度も自分にいい聞かせ、階段を踏みしめた。階段を登る足音、ドアノブを下げる力加減、ドアを開ける勢い、閉じるときの音、ドアノブからの手の離し方、すべてに意識を払って、冷静を装う。 外は喧し…

イントロ

ベタな設定デスゲームのプロット風小説。キャラクター全く作る気ないからプロットの域を出ない。 「ありがとうございます。集まっていただき感謝します」 スピーカーから音声が流れる。同じ空間に集合した全員が円卓を囲んで着席したところだった。学校に備…

プロットならばキャラクター造形要らないとの論調で勇み足。暴論だろ、いいんだ私はやってて楽しさを感じた。 唐突に理解する。私は弁当の蓋を再び閉じ、目を閉じる。冷静に考える必要がある。ここで焦って水筒の麦茶を飲めば相手の思う壺なのだ。お陀仏なん…

差す日の中で

無遠慮に飛んできた液体が頬を濡らすので、私はやおら頭を振り、僅かに纏いついた眠気を払う。指で液体を拭うと、それは皮膚表面でさっと乾燥して、染みになった。暗い青色をしている。 「…インク飛ばすなよ」 「あ?」 険悪な眼光だ。こいつは機嫌が悪いと…

粗末な!

赤レンガの柱の陰だった。赤褐色の長方形が計算されたズレを重ねて高く積み上がる走馬燈。まあ嘘だけど。死んでいないし、死にかけてもいない。 暑さ寒さも彼岸までと何時ぞやの昔には言ったらしいが、本日、8月21日は絶好調に熱く、最高気温は37℃、体感温度…

肥大エゴ告解

不満なき生など謳歌するに足らぬ欠陥品なのだ。不満のあることを褒めよ、誇れよ、昂じ商えよ。 いやになっているのです。嫌なのです。嫌気が堪りません。じりじりとしながらスマホの熱くなるまでネットをサーフィン、どうでもいいと判明した概念のBLをいくつ…