創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

狭間

なにか特別な日だったっけ。

首を傾げるがそんなことをしても脳内の記憶がポロッと心当たりを弾き出してくれるわけでもなく、今度は反対側に首を傾げる。私は考え事をしているとき必然的に目つきが悪しくなるらしく(自覚もある)、こんなときに人と目が合うと相手を不愉快にさせかねないため、何処とはなく上を睨むようにしている。葉っぱの裏が見える。ほぼ無風だから揺れていない。

そろそろ岐路だが…? 目線を対角線上に動かして、つまり斜め右上を見ていた目を左下、これは大体左横を見ることになる、隣の人物を視界に捉える。私もこいつも、互いに口数の多い方ではないから、並んで歩く時間に殆ど黙しているのは取り立てて言うほど珍しくもない。怪しさもないし、訝しがることもない、はずだった。私は首を傾げた。

こいつの第一声が欠けている。私の顔を見れば飽きもせず好きだ好きだと噛み締めるように口走っていたではないか。どこが好きなのかというのを、前からずっと問いただしたいところではあったが、真面目に取り合うのも癪で、私はペットのじゃれつきをいなす気分で聞き流してきた。そのコールが無いのだ。冷たい風がすかさずその空所を撫でていくような感覚に、慣れの恐ろしさなるものを感じる。私はこいつの言葉に、無くなるとほんのりした寒さを感じて肌をさすってしまうくらいの温度を受け取っていたらしい。

横目で見たこいつは、吹けもしない口笛を吹く真似をしている。視線は前方に向いていて、至って平然、という印象を受ける。どうにも違和感が拭えない。

寒くなってきた、と言ったら、じゃあ走ろうか、と言う。私はこいつが元々歩いていた側を奪って、少し早足に歩いた。そこは建物の影からはみ出すから、夕焼けの色を帯びた太陽の恩恵に預かれるのだった。数歩分距離の空いたのを駆け足で詰める音がして、そいつが私の後ろに並んだ気配がわかる。

やっぱりおかしい。いつもの言葉を言わなかった。もうそれぞれの家までの分岐点に足を掛ける。こいつ、何かあったのか? いや、見た感じでは普段通りだ。落ち込んだり激昂したりしているようには見えない。勿論、私に見えないだけで、とても辛いことがあった可能性は否めない。だが、表情を隠すのは苦手だったはずだ。知らぬ間に変わったのか。あり得るのだろう。

「なにかあったのか」

「ん」

「…どっちだ…」

別々の扉をくぐる直前に、最後の会話を交わすためにのけぞって相手の姿を眼中に収めるのと同じことを公道上の分かれ道でやっている。首の筋が痛いのだが、癖になってそのままの姿勢で返事を待つ。

こいつとの無言に圧迫を感じたのは、これが初めてだったように思う。私は我に返ったとき、自室の机に向かい、鞄から出した教科書を積み上げ終えたところらしかった。とても宿題を消化する気力がない。ベッドに倒れ込んで仮眠と称して爆睡した。

翌朝、昨日振りに顔を合わせた私の手を取り、あいつは跳ねるように前を行くのだった。

 

 

これが、私に今書ける恋愛小説なのか…。ホラーが入ってる。ラブコメを書くんだとばかり。