創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

対称

パソコンが無能になったと言って、やって来た。自分はパソコンに詳しくないので、どんなことがあって「無能」と表するに至ったのかは察せない。詳細を求めても理解できない可能性が高かったため、相槌を返すに留める。自分の横に、ソファを攻撃するように腰を下ろし、すかさず距離を詰めてきた。並んで同じソファを使うことはあれど、いつもそれぞれの時間を過ごしていた。今日のこれはなんだ。初めてのパターンだ。驚きと焦りで混乱した体は、兎に角距離を保とうと努め、仰け反った。気付けば両手を挙げている。平伏の態度を全面に出し、現在陥っているこの状況について、解説を求める。説明されても理解できない可能性のあることを、全く忘れていた。あのお、と切り出した声が震えているのがわかった。恥ずかしさが出てくるが、第一声を出せたのだから、勢いに乗って言い切るしかない。
「なにか」
「デジタルとアナログを比較してんだよ。もうちょっと待て。結論がまだ出てねえ」
「あ、はい」
とりあえず待てば進展するらしい。きゅっと口を結んで、待った。腹筋が辛くなっているが、言える状況ではない。さらに、顔面に酷い眼圧を感じるが、その強さゆえに視線は外へ逃している。
 
無理だ、と思った。脳内は無理に占拠された。腹筋が。ちょっと、と言ったか、すみません、と言ったか、割れそうな腹筋に意識を持って行かれていたので何を言ったか覚えていない。叫ぶように言ってしまったと思うが、その叫びで体勢は改善された。滅多に味わえない安堵を得た。腹筋をさする。
とん、と肩に乗る重みを感じた。手の平の包む感覚と異なるなと考えながらそちらに顔を動かすと、自分の肩には額が触れているとわかった。ぐい、ぐい、と次は額が肩を押す。対応に悩んで手も足も出せないでいると、漸く口を開いて、ぼそぼそと喋る。自分の耳の位置で、丁度聞こえるくらいの声量だった。わざと絞っているように感じた。
「アナログは、触れるんだよ。頑張れよ、アナログ」
「えーと、がんばります…? …って、あの」
「がんばれ、アナログ君」
俺のために、と続いたのが聞こえたような気がしたが、それどころではなかった。倒れ込んできた体の下敷きにされ、結果、腹筋に留まらず全身が変に疲れて痛くなった。心臓の音を聞きながら爆睡していた様子だったが、胸部から耳を剥がすと、首をストレッチしながら呟いた。悪くねえ、とのことらしい。
「首がいてえ」
「こっちは全身が痛いです」
「重力がきついな…今度は横にするか」
それから、自分が就寝するとき、背中側で心音を聞くもうひとりも同じ布団に入るようになった。家は別なのに、である。布団が狭くて疲労している。腹筋の筋肉痛は数日で収まったが、全身のこわばりが慢性的になった。パソコンが無能を返上してからもやめないので、アナログ君は故障待ったなしである。と、今晩話そうと思う。二十回目の決心である。
 
 
いかれている。布団にまで侵入されて危機感が無い、これはBL。こいつら合意はないが付き合っているのとほぼ同義の関係性であろう。ご都合が。なんだよこれ。