2022/2/14 水底は見えない。淀みなく流れる水を追うともなしに視線を下げる。日中の川面は陽光を反射して時折視界を明滅させた。 敦は欄干に触れて、しばらく橋の下を流れゆく水を見ていた。音はなく、黒いような、線がかかっているような、青のような、暗い…
2022/2/11 何度か名前を呼んでみた。しかし反応が見られない。瞼は閉じられている。 二人掛けソファを不躾に占領して眠りこけているその安らかな眠り顔を見下ろし、中島敦は小さく肩をすくめた。 「太宰さん、起きてください」 呼びかけながら、控えめに肩を…
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