創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

モーニングコール(太敦)

2022/2/11

 何度か名前を呼んでみた。しかし反応が見られない。瞼は閉じられている。

二人掛けソファを不躾に占領して眠りこけているその安らかな眠り顔を見下ろし、中島敦は小さく肩をすくめた。

「太宰さん、起きてください」

呼びかけながら、控えめに肩を叩いてみる。すぅ、と寝息が返される。徐々に力を加えてみるも、人を起こすための手加減では、せいぜい拍手をしていい音が出るくらいのものであり、無視して眠り続けるのはそう難しくないようだ。

背中側からは殴れば起きると過激な助言が飛んでくる。苛ついた声色でそう言うのは国木田であり、彼は何百回目と知れない予定不調和に怒りが隠せない様子である。

その原因がぐうぐうと眠りこけているのもまた神経に障っているらしい。

「起きてくださいよ」

敦は、反応を寄こさない太宰の腕を掴み、前後に揺すった。腕と、身体がぐいぐいと揺り動かされる。流石に耐えかねたと見え、太宰がおはようと言う。

「もう少しロマンチックなモーニングコールでもよかったけれど」

「今は朝じゃないですよ。それから、国木田さんが怒ってます」

書類仕事から逃げて昼寝をしていたことを咎められてか、何か気に入らないような顔をしている。しかし流れるような反論が紡がれない。珍しいこともあるものだなあと見ていると、突然太宰が動いた。がばと腕を広げ、すぐ脇に立っていた敦を捕まえようとする。反射的に後ろに飛び退いたが、こちらに非があると言わんばかりに恨みがましい目で見てくる。

謝罪しなければならない気分に襲われる。

「敦君が冷たいんだあ! 私は極上スイートな目覚めを用意しているのに」

ソファを離れて自席にたどり着いた太宰が演技臭くおいおいと泣く。

「太宰さんいつも滅茶苦茶にするじゃないですか」

「酷い! 私の好意を!」

「おい太宰…敦に不埒なことをしているんじゃないだろうな」

虫の居所が悪い国木田が食いついてしまった。立場が危ういはずの太宰はにこにこと余裕そうだ。…あれは楽しんでいる顔だ。放っておくと、拗れる。十中八九、碌でもない誤解が社に広まる。

防がなければ。

「国木田さん誤解しないでください! そういう不埒は無いんで! 僕が目を覚ますと花火みたいなものを爆発させるとかそういう感じのやつなんで」

「……それはそれで駄目だろう」

極悪非道な悪趣味放蕩人、みたいな二三の非難を太宰に浴びせると、国木田は眼鏡の位置を正して業務に戻った。危険な勘違いは解けたらしい、人知れず胸を撫でおろしている様子だ。今回はボヤ程度で迅速に対処できたからよかったと、敦もほっと一息吐いた。

自分も仕事に戻ろうと思い顔を上げると、事は収束したはずだが浮かない表情の太宰が目に映る。なにやら僕のことをじっと見ている。

「そういう不埒、ってなんだろうね?」

顔を真っ赤にする敦を見て、太宰は嬉しそうに口角を上げた。