創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

イヤホン

なにかL月を書きたいのだが。

 

「…こういうオチですか」

「お決まりの展開でつまらなかっただろ、気が済んだならさっさと」

私は夜神月の双眸を見据えた。どうやらこうされると少し弱るらしい。負けず嫌いの夜神月だから、毎回懲りずににらめっこの様相を呈してふたりで睨み合うことになるのだが、その心が気おくれを含んでいることを私は知っている。私のように考えを読み合って互いを出し抜く関係をこれまでに経験していないのだろう。その恥じらいが、からかうに足る。隠すようなことでもないから言っておけば、私にもそんな相手はこれまでにいない。

「早く返せよ」

イヤホンの片割れを耳に突っ込んだままにしているので、何度かこう言って急かしてくる。自分の普段使っている物であることもあるのだろう、衛生観念が悲鳴を上げているような面構えだ。面白い。基本私に対して好感触の表情をしないので、夜神月に関する不機嫌さや不満、嫌悪の程度を示す表情のバリエーションに詳しくなっている現状がある。こちらとしてはもっと友好的にいきたいのだが…。

そんなことを考えていたら、夜神月が一層眉間にしわを寄せている。聞けば、何を笑うことがあるのか、という。私が笑顔で勝ち誇っているようにでも見えたのだろうか。もしかすると口角を上げるくらいはしたかもしれないが、勝ち誇ってはいない。

イヤホンは返した。もう二度と同じイヤホンを使わないと決めている顔に見えたので、ごみに出されたら失敬しようかなと思う。

「今日も無音でした。一体いつ聞いてるんですか」

「多分お前のいない所でだね」

いつものように釣れない夜神月が、おもむろにマフラーを自分の首に巻き始めた。これには不意を突かれて、慎重を装って何故と訊いてしまう。時季は夏の盛り、8月の中旬である。マフラーで口元を隠して、会話の意欲のないことを対外的にアピールしようという考えか。

わかっているなら訊くなと睨まれる。今日は少しご機嫌斜めというやつのようだ。歩調もやや速い。

 

「あの、イヤーピースの新しいのを買って差し上げましょうか」

「古いのを…というつもりだろう、趣味が悪いな。自分でどうにかするから放っておいてくれ」

…という事情があって、私は夜神月のゴミ袋を漁り、ご覧の通り成果物を手に入れて来ました。特にイヤホンに困っているわけではないので、実際の使用場面はないに等しいのですが、集めたくなる魅力があるので仕方がありません。

これで納得いただけますか、ああ…無理ですよね。わかります。