創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

いざ、夏

「夏はきらいです」

まだ6月だぞ、と念を込めて睥睨する。はじめはベンチに居たのに、さかさかと移動して現在は木陰に隠れて座っている。夜神月はそれに釣られて日陰に収まったが、なぜ行動を共にしているのかというと見張りの意味合いが強い。見張り、それ以外の理由付けはいらないだろう。よれた白シャツで今日も猫背の男を見下ろし、ふたり黙って、構内を歩く人影の景色を見るともなしに見ていた。

竜河がぼやくので、こちらからの発言を挟む。その遣り取りを気付けば繰り返している。月は我に返って眉間を押さえる。日頃の社交の癖で、相槌を打ってしまう。

「言っておくが、まだ初夏だ。本格的な夏はこれから来る」

「日本は季節がはっきりしていて私には過酷です」

絶対に弱みなど僕に見せたくないであろうに、この様子は異様だ。間違いなく態とやっている。この向こうの態とに、こっちが気付かないとは思ってないだろうが、ここは少し。

僕が、弱点があったとは驚いた、と竜河に視線を遣る。両膝を抱え、背中を丸めて、親指を食みながら、じっと前方に目を向けている。その両目が僕を見ようと動いたものだから、ギョロリとした動きにたじろいだ。何か言うのがわかっていて数秒、数十秒。竜河は敢えて作った沈黙から、にらめっこのように僕を見ている。

「真夏には外に出ませんので。冷房の効いた室内で過ごします」

唇の端が僅かに上がり、それが挑発的な笑みに見える。月はこの瞬間に、これは勝負を持ち掛けられていると察する。にやにやとも形容しがたい表情に苛立ちを感じながら、目を離したい欲求を抑え込む。目を離せば負けだ、加えて先の台詞の内容も事に関係している。

竜河を冷房の効いた快適空間から引きずり出せなければ、負け⸺。夜神月は自分だけがわかる程度に、眉根を寄せた。

 

 

(なんでも勝負事に変えるふたり、タノシソ)