創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

容易いの、か

小田はシャーペンのグリップの所を摘んでペン先を遊ばせている。ノートを片手に、何か考えているのかと思ったが、違った。日記と、アイデア帳と、落書帳と、原稿用紙を兼ねる(なんでも帳と呼ぶべきだろう)大学ノートは、今日の日付以下、白紙である。
地上よりも風が強く吹くと感じるのは、単なる体感なのか。分身して地上と高所で実験しないと判明しないな。小田に共有すると、風速器くらいこの文明が作ってないわけがないらしい、尚もシャーペンをぷるぷるさせて言った。
屋上にいる私達は日陰に隠れて、ぼうっと過ごしていた。たまに家で麦茶を入れてきたペットボトルに口を付けた。制服のスカートと、横髪と、小田のノートが風で煽られて、好き勝手に捲れたり音を立てたりした。
「どうする」
「うん」
私達は無目的ではなかった。屋上(これは校舎の屋上ではない。デパートの屋上で、駐車場となっている)、ここで計画を立てているのだ。重要で、如何ともし難い、耐えかねて、手に余る具象への対応策を練る。
 
畢竟マザーコンピュータの死というか、まあそれは人間の命に手を掛けることになるのだけれど、行き詰まった思考はこの程度の策を出すと慢心してしまって動かなくなった。駐車場の広場に照り付ける陽と、掻き上げた前髪を乱す風から、海への願望をつつかれる。砂浜で波音を聞くだけの海を、ふと思い出すことがある。
気が狂いそうになる、夜眠れなくなる、肉を引き千切りたくなる、頬を抉って、腰の骨を粉々にして、それから喉に穴を開ける項目も追加した方がいいかもしれない。あの感情を、小田は、ちゃんと所持しているだろうか。はたまた、私は、正しく嫌悪できているだろうか。内臓から、忌み嫌う特定の器官を引き摺り出して、その赤黒いであろう肉塊を無感動に排斥するシミュレーション。あれをいらないと思っている今の感情は、本物だよな。本物。
「突き落としてあげようかとか、なんでそんな不健康な方法ばかり思い付くんだろうちの脳味噌」
「やろうとしてることが健康じゃないもん。方法全集でも借りるか」
 
私はまだ、探している。ひとりで。
事実に対抗する、方法を。どうしても受け入れられないこのさがを、いっそ受け入れられないままで貫かんとして。