創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

出会すL月

昨日の夜市小説のリベンジ。あれはあまりに月がLを目追いしていて不自然だった。

 

「こんばんは、月くん」

運転席から降りたら間断無く挨拶。飛んできた声の主は竜崎。こいつ、僕の行くところにしょっちゅう出没する。態とバッティングするよう仕組んでいるに違いないと見ている。

竜崎は隣のトヨタ車に自分の体が触れていないか目だけで確認し、立ち姿の重心を変えた。親指を口に突っ込んで、僕のアクションを待っているのか。こちらには何の用も無いんだが?

助手席では気まずそうにしている子が、上手い言葉も振る舞いも見つけられずにおたおたしている。突然現れた第三者と行動を共にする覚悟を決めているのかもしれない。

「竜崎、悪いけど僕ら…」

「見たらわかります。月くんがひとりなら、という薄い希望に賭けただけなので」

では、と言ってあっさりと踵を返した。不可解である。竜崎くらいなら、僕が夜市にひとりで来るキャラじゃないことは容易に推測できるはずだ。ここは浮かれて虚栄した興奮を、屋台の値の張る物品と交換したい人間の来るところだ。いわばハレノヒに飢えた暇人のためのイベントだ。(言い過ぎちゃうの)

僕は助手席の彼女に声を掛けて、運転席側の扉を閉めた。浮かれた空気がここまで伝播している。まだ、蒸し暑かった。

出店を見ているだけで楽しいねと微笑みながら、かき氷を注文する彼女を見ていた。僕の分も要るかと伺う気遣いは評価できる。断ると興を削がれたという理由で拗ねる女が居たので、面倒だから便乗してかき氷を所望する。適当な味でいいよと断っておいたら、同じ色で染まったかき氷をふたつ手にして客の列から出てきた。この彼女は一口頂戴が言えないタイプか。まだ早いとでも思っているのだろう。恥じらいに勝てなかったが故に、同じ味のものを食べれば共有財産が発生する、という思考かな。短絡的だな。

4つほど向こうの屋台に異様な人だかりができている。動揺した空気を放っていることから見るに、主催側のイベントではなさそうだ。

「気になるの? 見に行く?」

かき氷を慎重な手つきで掬おうとしている彼女が言う。自然、身長差で上目遣いになっている。目にはあまり乗り気でない心が透けていた。

「いや、別に気になるってほどではないよ」

どこか座れる場所を探そうと提案すると、彼女は二つ返事で承諾し、ひょこひょこ後ろを付いてくる。人混みの不得手な彼女が我慢できる寸前まで、あの騒ぎの近くへ寄ってみたが、人垣で中心を隠されていて見えない。掻き分けて、本気で見ようとしなければ見えないと悟って諦めた。彼女と縁石にしゃがんでかき氷を食べた。

 

今夜は花火が上がる日程ではないので、かき氷の他に炭火焼鳥など買って、駐車場に向かう。彼女を駅まで送り返してそのままお開きにしよう。面倒になってきた。ここは一旦睡眠を挟まないとやる気も出ない。でももしこの彼女が行動力を発揮するなら、仕方ないから応じる。減るもんじゃないし。

案の定といえば案の定、僕の車の傍らに竜崎が居た。アスファルトの地面に直接腰を下ろしている。僕に気付いて立ち上がる。両手に空の容器を持っているようだ。かき氷の容器。

「一芸見せたら奢ってくれました」

ここで溜め。確実にドヤ顔をしている。僕は竜崎の顔を見ないようにして、彼女を助手席へ促す。

「あの人だかり、お前だったのか」

「見てくれなかったんですね」

「ワタリさんによろしく。じゃ」

夜神月はバック操作で出ていった。最後に自動車を切り返した時直視した横顔は、断固として前方から顔を逸らさない意地を張っていた。レモンジュースと化したかき氷を飲む。ワタリを迎えに呼んで、夜神月のよろしくを伝えておくか。恐らく微笑でからかってくるだろう。それでいい。

 

解説︰

ここでいう「彼女」にはsheの意味しかありません。

いじられたいL氏なんなん(悪口ではない)。

仲良くないけど会話ができるのがL月のいいところですね。お互いに間合い測って緊張している様子が微笑ましい。性癖がまた歪んでいく。