創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

夜市行くL月

L月がとなり同士で一緒にいるシチュエーションが違和感あってどうにもすっきりした気分で書けないのが解消されれば真に楽しいだろうに。

 

・L目が悪い(近眼)

 

「夜市をやっているらしいですよ。誘われたりしてませんか」

何か含みがあるような、かと思えば特に意味も持たせていないような目つきをして、Lが言った。月はそれを受けて自分のポケットから携帯電話を引き出し、連絡が来ていないか確認するポーズを取って見せた。4件ほど、通知が入っている。電話やら、メールやら。しかし月は中身を見ることはしないで、携帯電話を再びポケットへ戻す。当日に遊びの誘いその他諸々を入れてくれるなと日ごろ繰り返しているから、今日入った連絡に応じて出ていく必要はない。相手が馬鹿でなければ、今通知が表示されている件は事務連絡とか、あるいは明日以降の誘いについてだろう。

そんなことを考えている月の様子を、Lは黙って見ているようだった。日暮れ間近になり、風の熱が冷めてきたから冷房の電源を切った上で窓を開けてあった。網戸を通って空気が入ってくる。

「特には」

「約束をすっぽかすと、酷いですよ」

月は窓の向こうを見た。雲の底と、ビルのいくつかが接している景色。Lがそちらへ顔を動かしたので意図を察して同じようにしてみたのだが。Lは、多分ねと呟いただけだった。女性との約束をすっぽかすと、多分酷いことになるよと言っているらしい。

「今日夜市に行く約束はしてない」

「今日以外ならある、と」

 

窓を開けると走っている爽快が感じられる。今回も開け放しておこうとしたが、その前に稼働してしまった冷房の涼しさに負けて、結局窓は閉め切り、走っている。負けたのはLだ。涼風の吹き出し口に諸手をかざして堪能している。月は横目でその呑気かつ幼稚な反応を眺め、ハンドルを握り直した。

現在、自動車を運転中である。Lが夜市に行きたそうにしている(のかはわからないが)姿を見かねて二言三言掛けたところ、月くんの運転なら。という妙な口上で行くことになった。行きたいやつが助手席でゆったりしているなんて、こっちの丸損ではないのか。

「あ、眼鏡持って来るの忘れたので帰りの運転はできません。免許証も家です」

「…財布は」

「すみません」

まじなのかこいつ。夜市に行って屋台の間を歩くだけ歩いて帰ってくるつもりだったのか? それとも他人(月)の財布頼みか? …。すると、500円くらいならありますよ、と宣う声。こいつも所持金くらいは持ち歩くのかと安堵した。少し穏やかになった気持ちでちらりとLを伺うと、ダッシュボードの小物入れをまさぐっている。そこに入れているのは初詣用の小銭だろ。すかさず咎める。全く悪びれた様子はなく、陳謝しているが心が籠っているとは思えない。

「何か欲しいって言っても買わないぞ」

月が脅すと、恐らく演技だと思われるが、焦った風にかき氷だけはと訴えるので、そんなLに優越した気分をしばらく楽しんだ。

 

Lは車を降りてから絶えず四方八方を見回していた。まっすぐ前を見て歩けないのか。横断歩道を渡りながら天空を見上げているので、その時はひやっとした。注意を促すと、冷めきった視線と共にちゃんと確認している意を示された。一遍縁石にでも躓いて派手に転べばいいのに。

「紺色の空です。なかなかいい雰囲気ですね。ところで月くん、手を繋ぎますか?」

「文脈どうなってるんだ…。繋がないよ、なんでそんなこと言うんだ」

「見張らないといけない気がした、…いえ、はぐれないようにです。嫌なら手錠でもいいのですが」

「は?」

そして近眼のLは、もともとはっきり見えないことに加え、日が落ちて輪郭のぼやけた屋台やそれを賑わす人々の風景を落ち着きなく見渡した。きょろきょろと、ずっとやっていた。絵でも描くのかもしれない。ちょっとした出来心で尋ねてみたら、「え?」だか「絵?」だか判別できない一言でぴしゃりと会話を途切れさせられた。あれがLのボケだったのかツッコミだったのか、もう真実を尋ねる気になれない。勇気が出ないわけじゃない。

「メロンソーダなんていいんじゃないですか? 私はかき氷で」

「メロンソーダは甘いから飲まない。お前に買ってやるよ」

「かき氷のシロップにメロンを選んだこと知ってますよね」

「今から他の色かけてもらえばメロンじゃなくなるんじゃないか?」

「色じゃなくて味です」

かき氷のシロップがみんな同じ成分であることはLも知っているだろうに、ここで敢えて口にすると蹴りが飛んできそうだった。結局メロンソーダもメロンシロップで緑色になったかき氷も買った。他に用事はないので、車へ向かう。メロンソーダをストローで吸い込んだLは、これを持っているとかき氷をつつけないとごねて暗に荷物係になれと命令してきた。むかついたので無断で一口寸借した。炭酸が甘ったるさをある程度打ち消しているようだった。意外と飲めたが、もう要らない。因みに勝手に飲んだことは嵩が減っていると指摘されて簡単に露呈した。

「人混みは苦手ですが、目が悪いおかげで情報量が削減されてそれなりに楽しめます。近眼も悪くない。近ければピントも合いますし」

なぜ僕を見る?

「竜崎が楽しいならそれでいいと思うよ」

かき氷に刺さって付いてくるストローの先端が気持ちばかりのスプーンになっている道具では不足と見えて、懐からマイスプーンを取り出した。かき氷を存分に救い上げ、満悦そうだ。歩き食いしているLがはぐれないで来ているかを何度か振り返って確かめる。見失う前に車に着いた。

メロンソーダの容器は結露でびしょびしょになっている。大きな水滴だけを落として、車内のドリンクホルダーに置いた。目ざといLが、飲みましたねと確信に満ちた物言いをする。確かに飲んだ、飲んだが、こうがめついと辟易する。却って奪ってやりたい劣情を駆り立てることに思いも寄らないのだろうか。

「言い逃れする気ですか。私の眼は近くの物が良く見えるんですよ、逃がしません」

助手席で膝を抱えて着席したLが言う。食べ物の恨みというやつで怒っているのかもしれない。そこまで気が回らなかった。Lは怒らせたら面倒臭そうだ、しかもよりによって一番こいつの厄介性を上げそうなネタで怒りに触れるとは。ミスをした。

運転席に乗り込みたくない。車内に収まったら、「近眼舐めないでください」とか何とか言って、至近距離で自白を迫ってきそうだ。居心地が悪すぎる。そんな空気の中、運転しなきゃならないなんて、試練の一種みたいだ。

いや。考え方を変えろ。代金は月が払っている。せがむLをここまで連れてきたのも月である。メロンソーダの一口がなんだ、味見くらい許されていいじゃないか。そうだ、どこに汚点があるというのか。

「素直なのは結構なことです」

 

全く理解できなかったが、「近眼舐めないでください」モードのLが発動して、運転中一時も緊張状態が解けなかった。一体なんなのか。自白したはずだぞ。

 

 

解説:

L月書くとL氏が気持ち悪い感じになる。私の手癖小説ってこんなんばっかだな