創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

なにしてるんだ、ひとりで。と聞き慣れた声が聞こえた。間違いようもなく、自分に向けられたものだと竜崎は思う。念の為に目だけで見渡す。周囲に誰かがいる気配はない。思った通り、声の主は私に話しかけたらしい。

「消灯時間だろ」

携帯の電灯機能で夜道を照らしてここへたどり着いた恰好のまま、そう言うと彼はそれきり黙った。手中で携帯を揺らすたびに光線が眩しい。自然と光源とは反対に顔を向けて、夜闇と山の影を見た。

夜神月は手元の照明を落として、佇んでいる。私が動くまで一所に居続けるつもりだろうか。それは彼の勝手ではあるが、なにを企んでいるのかと勘繰りだすと落ち着かない。

携帯で現在時刻を見る。消灯時間は過ぎている。

「部屋に戻らなくていいんですか」

「そっくりそのままお前に返す」

「すぐに戻ります。先に行ってもらって構いません」

この程度の人払いでは動かない心算だと見える。夜神月が怪訝を隠さないで見下ろしている姿が容易に想像できた。すべてが影に覆われていて判然としない今はこの想像に頼ることになる。

竜崎はおもむろに立ち上がる。暫く座っていたから尻の形が平らになっているかと邪推してしまうくらい痛かった。さすりながら、空いている手でポケットを探る。有線型のイヤホンが蛇の舌のように出てきた。といっても夜だから竜崎の手だけがパントマイムをしているように動いて見える。

「聴きますか? ここにWi-Fiが飛んでいればの話ですが」

Wi-Fiは来てないかもね。代わりといってはなんだけど、普段どんな曲を聞いているのか話してくれないか」

「……」

あまり間断を入れると相手に隙を与えるから決して多用したくない手だが、ここで敢えて間を作った。思わず愛想よく話題を快諾しようとしたのを飲み込む意図もあった。今、夜神月はどんな表情をしているのだろう。ただでさえ暗くて表情を認識しづらい上、あんな胡乱な心情を誘われる台詞を放たれると、想像力が追いつかない。

「月くん、そんなに私のことが気になりますか。では等価交換ですね」

「ふ、竜崎に言われたくないな」

ふたりで並んで歩いた。寝静まった宿舎の部屋で別れるまで、会話した。翌朝、夜神月がイヤホンを失くしたといって聴取に来たので、知らないと答えておいた。

 

解説

最後でいい感じに作った雰囲気ぶち壊しになったわ。なんなん。ストーカー気質やめろ。ギャグ化するんじゃないよ。ちゃんと返却するか弁償してください。

塾の合宿のようなイメージの雰囲気小説。大体同齢ぽいね。ふたりにはぎすぎすピリピリした緊張感を漂わせて睦まじい会話などしていただいて、傍観者には関係性が読み取れないと嘆かれるプロの騙し合いをやってほしいです(長い)