創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

エアコン

日が暮れて2時間経つまで匿ってくれませんかと言いながら、靴を脱ぎ、さりげなく母さんに挨拶を済ませて、僕の部屋へ向かう階段を上る躊躇のなさが、人間性を疑うには十分に足る具体例だと思う。これをやっている本人に訴えてもどうしようもないことは初めの一回で学習したので、それ以降はこいつに接したことのある人間全員のこいつへの信用を地に落としてやろうとしている。人間は具体的な話が好きだから、出来るだけ悪行の数々をストックしておくに越したことは無い。勿論、捏造してもいいくらいに、こいつの素行は並みの領域から外れている。しかし捏造だろうと事実だろうと「それマジ?」と言われてしまうレベルなので、あまり嘘を多用すると今までの話も全てでっち上げと疑われかねない。だから事実を集める。

「涼しいか」

「暑いです」

「だろうな」

というのも、冷房は効いていない。そんな部屋に滑り込んだ竜崎と、追い詰めてやるために同じ部屋に入った僕は頬から顎へ伝う汗を感じながら、互いの出方を探り合う。何はともあれ一番に窓を開け放ち、網戸に張り付くようにして涼を取っている竜崎は全く喋らないが、考えていることはわかる。僕の家に、そして僕の部屋に、涼みに来たのに冷房が効いていないのは耐えかねる、と。

日が暮れて2時間後、というのは、大体太陽に熱された地面や大気がそのほとぼりを冷ましてきたタイミングに当たるから、それまで待てば冷房は不要、つまりこいつはエアコン代をケチっているのである。

「違いますよ、月くん」

「へえ、何がかな」

「私の趣味が、他人の家のエアコンの匂いを嗅ぐことなんです」

「嘘をつくな」

追い出した。すぐに窓を閉め、冷房を効かせる。

夕食に呼ばれて階下へ移動すると、家族とコマーシャルを見ている竜崎が居た。台所には冷房が十分に効いている。まあ神経の図太いこいつならこうなりかねないとは思ったが。

早く帰れ。もう日暮れ後2時間は経っている。

 

解説(余計):L月ってこんなんじゃないですよね? こんなに仲良しじゃ、ないですよね??

ところでエアコンを稼働させると特有の匂いがしますね、カビっぽいような。クーラーのあの匂いで、夏を感じます。