創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

第一歩

自分は背伸びをしていたのじゃないか、と疑う。常に冷静でいるつもりなのに、いつの間にやら冷静と遠く離れて奇行を発している、なんてこと。私はごく真剣に取り組んでいるのだが、私のある瞬間、ある行動ひとつを切り取ると、奇行としか判じ得ない姿態を晒しているのだろう。まだまだ中二病じみた偏屈と自己愛に翻弄されているのだ。

私はただの二十二歳である。高齢者の経験はない。手練の社会人も経験がない。成り切って、振りをして、詐称することはできても、その欺瞞がまかり通るとは思わない。単なる大学中退者、浮浪願望を潜めたアルバイター、現実直視能力を欠いた生物学的女性。素直に認めなければ、どんな嘘も美しく纏えない。素地を正しく把握すること、厳戒に理想を排除し切ること。

今やっているバイトは現時点で三月半続いた。まだ最長記録には届かないが、今までやったバイトの中では一番軽くない作業といえる。軽作業で雇用されることに抵抗を覚え、その理由として舐められている感じがすると答える私にあっては、今のバイトはその感じが最も薄いゆえ、展望も見えてくる。

テレビ電話を繋いで朝の集まりに参加する。定刻まで三分あるのを、読みかけの本を開いて暇をつぶす。一人ずつ指名を受け、昨日の進捗を報告していく場面。パソコンのディスプレイに映る画面共有。画面の中の画面で議事が取られていく。暇だな、いいや、平和なんだな。読みかけの本では陰謀と殺人を間近で見せられ、如何に己の日々に危機感の無いことを囁かれている。私は何の対抗策も持たず、防御も武力もぺらぺらの紙。温室で育ったことがよくわかる軟弱。平和に浸ってその稀有を実感しないがゆえの慢心、自分は無条件に大丈夫だと思い上がって疑わない。

大丈夫。

大丈夫?

今にパソコンの向こうで誰かが襲撃を受けて日常を失うかもしらん。パソコンの向こうで突然の心不全なんかに見舞われて床に倒れ伏すかもしらん。私が、抵抗無きままに今生の別れを味わうかもしらん。

何があるか、一寸先を見ることが叶わないのがこの世界、この人生ではなかったか。怯えようが勇もうが、本質的には闇に放り出されているのが人生の哲学、ではなかったか。

またステレオタイプか。悲観主義にはまるから思考が固定されている。つまらん。

爆発しろ。選べるなら自分の体。次に自分の脳。選べないならなんでもいい、私の日常を破壊して、平和を侵して消し去って、自殺できない臆病を絶望的に嘆かせてくれる爆発。爆破。タナトス。いいやなんでも。馬鹿らしい。

拳銃がほしい。

私は進捗を報告した。いくつか課題が溜まっていた。その課題と称する行き詰まりを週明けに解消する方針でまとまった。場は解散となり、口々に失礼しますといって今日の作業に取り掛かる。整然と並べられたアイコンがぼこぼこ減っていく。後ろから五番目くらいに私も退室のボタンを押す。

パソコンの画面が真っ白になって、これは画面が発光しているとわかったときには私の体の半分は光に飲み込まれた後だった。毛嫌いしているラノベの異世界転生にありがちなシチュエーション、なんだこれ。仕事用パソコンじゃなくて自分用のプライベートパソコンでやってくんねえかな。壊れたら報告するのが面倒だ。

ぶわわー、と私は目も眩む白の中に包まれて、煙のように消えました。

なんてご都合あるわけないか。酒飲んで記憶能力崩壊させて狂人と化して頭を掻きむしり絶望の耽美で笑い声を抑えられなくなって階段を踏み外し頭部強打で即死。ねえかなそういうの。

愚痴か?きめえなひとりでやれ。