創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

脳漿

「貯金がなく、貧しい」

小説リハビリを決めたので、一日でも書かない日があると、一度で元の木阿弥に至ると目に見えている。書くしかない。日記は書かなくても小説は書く。正しく、私が小説だと思えるものを書く。私小説ではないものを。

 

髪の毛の外側にあるやつが単独で頭の外周に浮遊しているから、静電気を纏っているとわかる。下手に触ると弾ける痛みが怖いので、私はただ視界に収めるだけに留めた。最近の癖で、指を唇に当てている。今度は指の背で上唇を潰しながら、もう一度静電気で膨らんだ頭髪を眺めて、作業に戻る。

 

缶コーヒーをひとつ手にして帰ってきた。問題なく金属を触れているようだが、ファーストタッチは通電の痛みを伴わなかったのだろうか。表情からでは読み取れない。電流事件があったとも、なかったともこじつけられる顔。いや、元々こういう顔だったか。

私の隣の席の人間も立ち上がり、用を足しにいくのだろう、この部屋唯一の扉へと向かう。左右で均衡の取れていない歩調は相変わらずで、それは首が常に右に傾いているせいだと思うが、本人に話したことはない。滑らかな歪みのある動作を見送る。

さて静電気だが、私の上司に値する。業務はデスクワークなので、各々がデスクトップ画面とにらめっこしているのが風景である。社内連絡すらメールやチャットで済ませる節がある。ゆえに比較的静かだと言えるだろう。上司も黙ってキーを叩いている。私は資料の見直しをする。完成を急いでクオリティを欠く可能性が拭えない。所詮クソバイトの身、しかも素人バイトだ。背筋を伸ばしていかねば。

 

定時だ。上司は身体からぱちぱちと僅かな破裂音をさせている。物理的に近寄ると危険だと本能で察する。気を付けようと思ったら、運命が私を嘲笑うかのように同じエレベーター。

その後はご想像にお任せしますが。

帰宅して、久しく覚えなかった欲求が発露し、湯を沸かした。自分の技量は未熟に過ぎるなとわかった。バリスタを軽率に目指そうと思った。

コーヒーには、氷を入れて冷ました。