創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

落ちろ

「新しい住居に移る」

須らく労働は搾取を伴う。クソなのだ。嫌だ、もう嫌だ、いい加減にしろ、誰も働きたいやつなどいないのだ。正々と矛盾しやがる。労働できるやつがすごい風潮はまだ絶えぬ。

 

落ちたらワニに食われるのだと条件をつけて、ませたガキが見上げてくるのに腹が立ち、そのしたり顔をするに似た豊満な自信を地を抉るほど明確に堕とすべく、僕は窓を開けた。普段は閉じている二階廊下の窓。南向きの開口部から、窓枠に削ぎとられた風が僅かに流れ込む。

白線ゲームの気分でいるがいい。本当に綱渡りをして、真下の水中にワニのいる絶体絶命など想起することすらない、その無知の幸せを、無自覚に知るがいい。

網戸を開け放して、マセガキの背中を押し出した。生き物の重みが手のひらに残り、良心というやつが張り付いて後味の悪さを覚えさせようとしてくる。スローモーションで屋根を越えていくマセガキ。空中浮遊。マセガキは空中で顔の向きを変え、僕を見て舌を出した。

僕は片眉を上げて、それからちらりと舌を覗かせてやる。そろそろ屋根が途切れる。後は落差の大きな宙をひたすら無様に落ちていく。落下音は聞こえないが、地面に衝突している頃合いだろう。きっと直ぐにマセガキはワニに食い尽くされた。僕は無意識の内に握っていた拳を開く。ところどころ青い血管の透けるそれをぼんやりと視界に入れる。一昨日切った爪が視界に並ぶ。なんだかいらいらした。

手のひらに張り付いた良心のどす黒さなど、取り立てて記憶に留める必要はない。その義理が一切存在しないのだから。