創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

偽悪

騙そうとして言ったことではなかった。そこに故意はなかった。悪意のありようはない、勘違いがすべてだった。私の過失が結果的に嘘の発言を導き、それを周囲に認知させたことは悔いても改められない。吐き気がしてきた。消せるものなら過去に戻って事実を正しく伝え直したい。気持ちが悪い。電車の揺れで吐き気が悪化しなければいいが。

私のした勘違いというのは、全然の些事である。振込金額の欄でなく、預金額の欄を見て、その値を記憶し、先月のバイト代が十二万あったと打ち明けたのが事のあらましである。クソほどしょうもない勘違いだった。振込金額は九万五千だったので、三万弱の上乗せ金額を話した過失が発生した。今日通帳を見てこれに気付き、既に嘘をついてからふた月経過していることに呆然とし、吐き気を催し今に至る。電車の窓から頭を出してゲロ垂れそう。気分が悪い。

病院行の道程、電車の車両内、月一回、私は通帳の読み違いを報告しなければならないのか? 病院で。ばかな。ばかだ。ばかのやることだ。そんな報告は要らない。私が痛烈な自己批判に苛まれ、吐き気に襲われ意識が朦朧とするくらいなら、言うべきだろうが。

くだらね。自分殴って気絶しろ。羞恥に浸って赤面だの、一人称視点では面白みがない。抹消だ。

私は結局吐き気の高調に耐えられず、四人掛けの席に足を突っ込み窓を開放し、風が唸る窓枠から頭を突き出した。サッシにしがみつく私を引き剥がそうとする者はいなかった。異常に感じて怯えているのだろう。触らぬ神に祟りなしとか。誤用か?

進行方向から、灰掛かった白色の棒が飛んでくる。あ、と思う間に眼球に擦れるほどの距離に迫り、私の視界を埋め尽くす。この時、棒ではないとわかった。板状だ。フェンスか? 私の頭部を弾き飛ばして、その場にじっとしている。黄色い車両が離れてゆく。