創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

大人

これは寓話。「大人」

 

少年が大人の腰を越すか越さないかの背丈の頃。少年はよく笑った。周りの大人らはその笑顔を鏡に反射するように柔らかく少年に接し、少年はそれに応えてさらに深く微笑んだ。

少年は身近な愛情を感じ取る力に疎かった。当たり前への感謝のための、当たり前が何なのかを知ることができなかった。

やがて少年は疑心に囚われ、周囲の者を無条件に信じる無垢な心を失った。反骨精神がむくむくと存在感を増し、これを自己正当で鎧うことで、脆弱な心を守ろうとした。大人が、字義通りほど大人びてはいなかったことが少年を絶望に追い込んだ。

いつしか少年は他の大人らと同じ目線で立てるようになった。踏み台も、相手に屈んでもらう必要もない。少年は自己を省みて、自身も例に漏れず大人にはなれていないことを悟った。白いTシャツの上から爪を立て、心臓部分を握る。今すぐ鼓動を止めてやりたくて悶えた。少年は鉄面皮のような表情で胸から手を離し、おもむろに外へ出た。Tシャツの胸元にはしわが残っている。

カラスに笑われた気がした。電柱の上方で、バケツに乗っているやつがいる。あれが自分に嘲笑を浴びせたのだ、今またカラカラカラと馬鹿笑い。堪らない。コントロールに自信があったら小石を投げているところだ。のど自慢であったら腹からの声で威嚇していたところだ。少年は電柱の根本でしゃがみこみ、頭を両腕で隠すように抱いて嗚咽した。目から鼻から、とめどなく流れていく。

一台の原付が、蹲った少年の肩を掠めて過ぎ去った。少年は、飽きるほど繰り返した絶望の思考回路を今一度辿り、一層熱いものが、自分の中から流れ出していくのを感じた。止めようがなかった。

やはり、……

皮肉な爽快感を覚えながら、少年はわらった。

 

 

詰めが甘い作の気がするが、このまま保管しましょう。