創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

挑戦と後悔

庭に出た。日が陰りはじめて空気も大分暑さが和らいだ。特に何を思うわけでもなく、気の向くままに足を伸ばした。コンクリート塀の向こうに畑用地がある。今夏は気張って耕してみたが、暑さに負けて水やりを放棄してからはその有様を見ていなかった。自分のやった悪事を確認するのに躊躇っていたからだ。

小規模ながら耕して畑と定めた区画は、他の手入れしていない土地と同じ色に飲まれていた。緑。苗木ではない植物が生うている。全体が生き物の緑色ながら、とりわけ畑用に拵えた部分の草は背が高かった。苗の育った高さに合わせて伸びているらしい。畑で育てようとしたのは野菜だった。トマトとナスは、野草の生育に圧倒されて萎えていた。

隣で嘲りの感情を表して鼻を鳴らすのが聞こえた。言い足りず何か喋りだすかと思って横顔を盗み見るが、読み違えたようだった。ふたりで棒のように立ち尽くし、草の茫々に茂った野原を見下ろしていた。

いいこと教えてやろうか、と尋ねられたので動揺して瞬きを繰り返す。案の定隣ではにやりとした悪巧みの顔をしている。自分は何度も繰り返す瞬きによって心を構え、ごく自然に先を促した。彼は左の二の腕を、右手でさすっている。

「気付かれるようじゃ駄目なんだよ。文字通り命取りになる」

「それが、いいこと…?」

「今後生きてくための教訓だろうが」

知った風な口を利く。どんな場面で役に立つ教訓なのだろう。スパイ行為を働く未来でも見えているのだろうか?

ふくらはぎに痒みを覚えた。患部を見なくとも、蚊の仕業だと推理が立つ。

「痒い」

「プロならそうでなきゃ駄目だっての」

彼の左手がずいと突き出される。手の平には赤と黒。血の染みと蚊の潰れた姿。自分は、敢えてデリカシーのない振る舞いで不興を買いたがる姿勢に眉をひそめたが、彼はそこまで見通して嘲弄のような笑みを見せているのである。

ふくらはぎの腫れを爪で掻くため、やや屈伸の体制をしている。だから上目遣いになるのは必然的ではあったが、これを理由に手の平の血諸共シャツになするぞと激昂するので理不尽を感じる。彼は自分の刺された所、左の二の腕を反対の手で思い切りよく叩き、派手な音をさせた。痒かったのだろう。自分はみっともなく驚いた。相手のサディストな血が悦んでいるのはよくわかった。機嫌のよいとき特有の眉の傾斜である。自身を叩いた彼の腕に、蚊の圧殺された姿が付着している。指摘したら顔面に水を掛けられた。雨水を貯めている水槽の中の水だった。