僕が言ったことがそんなに面白かったらしい。所詮小学生程度の性知識しか持っていないのだろう。抱腹絶倒の姿を睥睨する。目尻を拭って、余韻冷めやらぬといった様子で息切れを起こし、絶え絶えにコメントを寄越してくれる。
ちゃんと想像してみたか? とのことだった。
「したくない」
「生理的嫌悪を一旦脇に置け」
「……」
僕は苦い顔をして黙った。言わんとすることはわからないでもない。ちんこちんこと呟いて笑いの波を自らぶり返している滑稽を横目に、僕は大人しく想像しなければならないのか。
ちんこが服着て歩いている世界を。
まずい、こいつがこれを想像した故に爆笑していることを知っているせいで、僕も釣られて破顔してしまいそうだ。ちんこが跋扈している。絵面として面白くないわけではない。酔っ払っていれば単純に笑えたかもしれないし、もう少し年齢が幼ければ笑えていたかもしれない。僕はひとりでこれを始めに想像したとき、くすりとも笑わなかった。
人間とは暴論を被せれば考えるちんこと呼んで支えない性的な生き物だ。駅で電車を待ちながら、考えた。近所の高校から帰路に付く学生がホームにまだらを作って駄弁っていた。身なりを整えて、同一の学校に属する証明の制服を身に着けている、その洋装の下はちんこなのだと想定してみたのだった。
電車を使う用を済ませて自室へ帰った僕は、今こうして畳の上でさんざんに転げまわる馬鹿笑いを聞いている。部屋から蹴りだしてしまおうかとも思った。鉄製の階段を転げ落ちろ。慌てて掴んだ手すりが脆く、身を立て直すには至らないでなおも転落する場面を見てみたい。芝が生えているから痛くないだろう。強かに腰を打つがよい。
「ここが亀頭かーっ」
息切れし、顔を真っ赤にして苦しそうに馬鹿笑いの残滓を引っ掛けている奴が僕の首を絞めんと腕を回す。半分は肩を締め付けていた。気管は苦しくなかったのだ。僕は嘘を吐き苦しい苦しいと漏らす。ギブアップと呻いたとき、二人共に背中から畳に落ちた。
ゲラゲラ笑っていた。僕の顔も直に真っ赤になった。