弟が自分とは別個体であることを、本当の意味で理解した瞬間はどこだっただろうか。顎を伝う汗が、重力に引かれてついに肌を離れたあの時だっただろうか。学校から帰って(部活には入っていなかったし、寄り道をする趣味も持っていなかった)、じわじわと苛む…
「敢えて果たす、って書くだろ?」 渡り廊下で交わされる声。移動教室の用意一式を小脇に抱えて連れ立つ。三階の渡り廊下には天井がなく、雨ざらしだ。夏が過ぎ、日差しが和らいだといっても多少のことで、やはり天下に出ると眩しい。目を細める。 また、割…
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