創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

倫理

無人の商店街を歩いている。夜に冷えた空気が足元から巻くいついて身体の温度を下げていく。ずんと身体が重くなる。

目が覚めた。今ひとつ気分の上がらない空の色、風の湿気、光の加減、私の体調。昨日より寒いらしい。雲が、空をムラなく覆っているように見える。だから晴れ間はなく、光線も差さず、ぼんやりと暗い大気が降りているわけだが、私は、自分が強い光に弱いことをここで思い出した。曇っていて何が不満なのか。目の奥が刺す痛みに見舞われることのない曇天、いいじゃないか。

レースのカーテンを全開し、黙して右拳を突き上げた。気分よ上がれ。

それでも今ひとつな気分は変わらずであった。もう今日はこういう気分で過ごすことにする。

着席したのちは特にすることも無くなる隙間の時間を、乱歩の小説を開きながら持て余す。ざわざわと私の集中を阻害する環境のスクラムが、飽きずに今日も展開されている。ニコマコスなんとかについて議論しているのか? それなら少し参加してみたくもある。私は目隠しにするには頼りない乱歩の小説を盾にして、陰からクラス全体を観察した。頬杖をついた。

隣の席の腐女子が、生身の人間を相手にとって発言したなら周囲から散々の袋叩きに遭うような、倫理観を疑われる感想を吐き出したので、乱歩は半分閉じられた。この腐女子はこの後の人生をどんな人間関係を伴って送るのだろうと心配しかけたが、自身も同程度であるので考えるのをやめた。私が人間関係を構築する方法が優先ではないか。腐女子は一生独身を即答し、誇らしげに胸を張った。表情が輝いている。彼女の仲間が同調に寄った反応を示し、お馴染みの結論に至ったらしい(推しがいれば他には要らないというやつだ)、誰それの何がいいとかなんとか説き始めた。

私は気付かずその会話の方を向いていた視線を引き戻し、再び乱歩を開いた。人間椅子読むかな…。