創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

臼歯

鰐の巨大で戦慄を誘う大口に挟まれて願い事をしたい。今年は生き生きとした心理状態でいられますように。今日はいい日だったと言って眠れる日が続きますように。平和を知らず享受していられますように。見舞われませんように、如何なる苦難にも。

「日本の伝統体験してこい」

けつを蹴られて玄関から転がり出る。寒い。いや、二月の方がまだ寒いらしい。正月の寒さは寒い内に入らない。気張って面を上げたが、洟を啜る。後頭部を掻きむしる。方向なんて知らないし、聞く間もなく家を追われたから仕方がない。

こんこん、と磨りガラスを叩く。

「早よいけや」

「どこにおる」

「そん…そんなん……知らん」

舌打ちしてスマホのページを捲っているらしい。くそが、とか、ばかが、とか、治安と知能の悪そうなBGMを聞いて待つ。

「やっぱり会いに行くしかない。行ってこい」

「だからどこに」

「あ? 人のおるとこに決まっとるだろ。笠岡まで出ろ」

「はあー!?」

檻のようにふたりを隔てる網戸を掴んで揺らす。屋内側からうるせえうるせえと非難轟々だ。したり顔で行為を続行する。不意に外れた。予想は出来た。ふたり同時に叫んだ。

「てめえ! 責任取れや!」

「獅子舞見に行けつったそっちのが発端やろが」

「見に行くんじゃねえ、噛まれてこいつってんだよ」

「じゃ、それ行ってくるから猫よろしくー」

「網戸の角で撫でるぞ」

普段運動を怠っているので、ふたりともふらふらしているだけである。外れた網戸をこれ機と見て飛び出した猫の速さには到底敵わない。首に付けた鈴が鳴っている。右か。

「あっちだ」

左を指しているそいつの肩を小突く。耳大丈夫か?

「大丈夫かお前」

「自分に聞け」

 

 

はあー、なかなか楽しいじゃないか。