隠してパン粉をまぶして狐色に揚げて、上等なカキフライに見せかけたら誰でも食らって血肉に溶かしてくれるのか? はは、苦手なんだよマジシャンになるのは。
隠すのが、面倒くさいんだよなあ。命に替えたい秘匿はないし。墓場まで持っていく貴重もない。粗末だね、亀裂の入ったステンドグラス、足の欠けたテーブル。隠すのは何の為か? 欠点を見せないためだ。抱く完璧を表現するためだ。
これでもう、わかったろう。私に隠す気がない理由が。自堕落に真っ逆さまな体勢を直す意欲がないことが。
誰も登壇しなくていい。私自身、もうしばらく後には降りるつもりでいるのだ。他人に明け渡す面倒も負いたくないからね、ここは幕引きなんだよ。本当は見せたくなかった。開くことさえ無くてよかったんだ。だって、こんな、いやいいよ。今にも張り手を繰り出したい顔をして私を見ているもんね。禁忌へ越境したらしい。
この幕を下ろすのは、特定で特別のきっかけが記憶されていて、それが私の背を押すのではないよ。酷にいえば、もう何を言われても、私がそれを新しく取り込んで定義しようと思わない限り意味を成さない。ほら、意気込むな。怖い顔をしている。
敢えてこの話を披露する理由もわからないね。どうしてぶちまけたのかな。さいごまで主役でいたいと願っているのか。疾く降りたくて、降りたくて全身の肌を掻きむしってしまいそうなのに。
綻んだこういう矛盾がさ、ひとを追い詰めて逃さないんだ。人格を壊して精神的に消失することを期待して、真っ黒な夢を見る程には。
…って、何だよ。抓るなよ。泣いてない、泣いてないから、笑うなよ! いや、やっぱり笑っていい。だから私の腕を抓るその指を離し|て。