創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

悪用

家人は盆の墓参りで留守にしています。人気のない部屋で、文具や家具が囁き始めました。今回は事務机とその発言に反応した一連の会話を拾ってみましょう。なにやら憤怒しているようです。

 

「あらゆる物が、悪用の可能性を孕んでいる」

「でも正義の下での悪用なら許せるんだろ?」

「そこに筋が通っているのなら」

「論理武装したふりの自分都合な筋もあるはずだが?」

「どんな道理もエゴが絡んでいるものだからね…」

「サンドイッチ食べたくなってきたかも」

「テメ、口無えだろ。サンドイッチの味も知らんだろ」

事務机が関節のひとつを動かして、引き出しと呼ばれているパーツを開いて、閉じる。粗暴な音が跳ね、部屋中の囁きが一度に静まり返る。まるで教室のようだった。磁石開閉式の筆箱は黙ってその光景を見ていた。

事務机は自分の天板に乗った数々の紙束や筆記用具、スタンドライトや段ボールなど、天板総面積の半分以上を占している物を振動させた。上の物はがたがたと揺れ、その不快に吐き気を催す物もあった。重ねられた高さが定規の身長ほどあった紙束がひとつずり落ちる。情けない声を漏らして滑る紙束の先にいた鉛筆が、これまた危機回避できないばかりに呻き、紙束とハーモニーを奏でる。

「やりすぎ。お前アンガーマネジメント真剣に考えたら」

「その言葉使いたかった感すごいっすね。用法合ってるけど」

紙束は、鉛筆と消しゴムを押し流して畳まで落下した。

 

「なあ紙束よ…俺ら大丈夫だよな…」

「はは、お前、角〇〇に利用されるのが怖くて情緒不安定だね。でもそれって言うほど悪いことかなあ」

「なんでそんなこと言ってくれるんですか…ショックです、無の境地に至るしかない」

「頑張れ」

紙束はにっこり笑ってみせた。事務机の感情で動揺させられて(物理的に)、畳に落ちたことを根に持っている。鉛筆と消しゴムは呑気に絵を描いている。紙束は黒鉛を擦り付けられながら、されるがまま、天井を見て過ごす。は、なんだこれ、官能的なシチュエーションか?