創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

4月1日(万莇)

「なぁ、莇、実はな…」

暖かい春の日。桜でも見に行こうか、なんて居間でくつろぐ何人かが花見を提案している。その傍らで妙に畏まった様子で耳打ちしてきたのは万里さん。俺は相手の空気に飲まれないようにと思い、表情を変えず応える。先を促すと、万里さんの目が鈍く光った。

「実はな…俺、予知夢見れんだよ」

は?

「……」

無言でいると、何やら楽しそうな顔をして、びっくりしたか?と問うてくる。まぁ、驚いたのは驚いた。それも、予知夢が見れんですねすげーってやつじゃなくて、それをマジの顔して告げんの何かの前触れか?って感じで。ちょっと怖い。

俺はひとつ深呼吸を挟んで精神を鎮めてみる。

何から聞こうか。

「どんなの見んの」

「んー…ま、大したやつじゃねえんだけど」

そう言って、万里さんは一度目線を外し、再び俺に目を合わせてから、じっと覗くように見てくる。見詰めているというやつかもしれない。真剣な目でそうしているので肩が引きがちになる。あまり人の目は得意ではない。

「明日が来るかどうか、わかるとか」

やけにきらきらした目で、というか表情で、意味深に湿った声をして言うから、反応に困る。文脈不明に肋の中の臓器が大袈裟に動き出す。

「しょーもな、い…」

「だろ?」

嬉しそうに声を上げて笑う万里さんを見る。俺に秘密めいたことを教えた理由も、予知夢を見る感覚も、次の日の有無がわかる利も害も、それを俺にしょうもないと一蹴されて笑えるのもよくわからないが、何となく、それでいいんだろうなと思えてくる。万里さんが笑えるなら。

明日があると確信できるなら、また朝が来て会えるわけだし。

 

午後からは適当に飲み物と菓子を用意して公園へ行った。桜が程良く咲いていると噂だったその公園に行きたがる何人かに付いていく形だ。先陣を切る人間が荷物を運んでいるようだから俺は手ぶらだ。

歩きながらスマホを見ていた万里さんが、端末の電源を切ってポケットに仕舞い、俺の横に付く。何の用かと思っていると、言う。

「予知夢見るっての、あれ嘘」

はあ、と曖昧な反応を寄越す俺に、懲りずにネタバレを続ける。予知夢が見れたらいいなんて言うから、何故かと問うてみる。

「お前と明日は何できる、って知ってたらもっと楽しみになんじゃん?」

「!?助平…!??」

「おい、話ブッ飛ばすな…って、先行きやがった」

花見に向かうこの団体の前の方で、莇の謝罪する慌てた声と、心配する何人かの声がぱらぱらと聞こえる。動転した莇が身体をぶつけてしまいながら速歩きしているらしい。

今はそっとしておいてやるか。

前方で人の背中に見え隠れする莇の姿を視界に捉え、ポケットのスマホに手を触れる。