創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

一緒に色んなとこ行きたかっただけの(密誉)

ほら、と声が降ってくる。肩を数回叩かれ、まどろみの中から浮上する。瞼を上げると、いつもの顔をして笑うアリスが目に映る。しゃがんでいる。

オレはよくわかっていないまま差し伸べられた手を取る。オレの立ち上がるのに合わせてアリスも膝を伸ばした。気を付けるんだよ、と忠告を受け、自分が水上の船を地に立っていると知る。

「流石、ぐっすりだったね」

何が流石なのか、などと取り立てずとも自動再生のように勝手に喋るアリスは、案の定ひとりで話し続けた。

「密くんはどこでも寝てしまうからね、今回もそうだろうと予想はしていたが…漕ぎ出して三拍もせずに夢の世界とは予想を上回る早さだったよ」

ワタシの漕法がいいゆりかごになったかな、と食い気味に自惚れているのを横目に見る。漕ぎ方とか場所とかは関係ないと指摘を入れると、少しだけ気落ちしたような声色でそうかいと返ってきた。

 

桜は散って、地面に花弁を敷いている。

葉桜、とか言うんだったか、和らげな緑の葉が添えられて、花の散った萼の濃い桃色が代わりの花みたいに見える。

「お参りしよう。密くんは、初詣は寝てしまっていたからね」

突然何を言い出すかと思えば神社に行こうと提案するアリス。何故、と文脈を尋ねてみたくもなるが、納得できる答えが返ってこないのはいつものことなので黙っておく。

地図上では現在地の付近にあるらしい。特に目的もなく歩いているし、大人しく従う。

「賽銭は入れた…」

そう言うと、アリスはおみくじを引きに行こうと声を上げる。何か楽しそうだが、年に何回もおみくじを引くとおかしいし、もしかして正月に引いた分は凶とか大凶が出たから上書きしたいのかと考える。

…なるほど。狡くないか?

 

促されるままに賽銭を入れて、鈴を鳴らす。拍手とか礼とかを済ませて手を合わせる。賽銭はアリスが出してくれた。というかオレは財布を置いてきたから払わないつもりだったのに、出された。

「…さて、済んだかね」

軽く顎を引いて示すと、今度はおみくじだね、と喜び勇んで歩き出す。また財布から小銭を出してくれるらしい。おみくじ代は任せたまえと言う。

ふと気になって、さっき手を合わせた時何を祈ったのかを問うてみる。

百円玉を渡されるので、右手を出して受け皿にする。

「そういうことは、人に言わないものだよ」

アリスは、人差し指を唇の前に立てて、ウインクでもしそうな笑みを浮かべている。

 

次の日は、雨が降った。

朝から雨音が激しく、眠りが浅くなる。しかし雲が日を翳らせていて薄暗いから、寝入るのに抵抗はない。

「やあ、なんとワタシの祈りが天に通じたようだ」

オレに目を留めると、広げていた新聞を畳み始める。天気欄が上になって置かれた。ちらと見れば昨日の日付だった。

「聞きたいかい。天への祈りを」

「…天気予報が当たっただけ」

「むぅ…浪漫がないよ密くん」

合掌ポーズでくるくると踊りながら、まだ何か不満げに喋っている。神に通じたワタシの詩とか今なら雨音のBGMで神秘性が増すとか喋っている。

「祈ったことは人に教えないんじゃなかったの」

「……フ…フフ…。君になら良いかと思ってね」

なにそれ…と眉を寄せてジト目で見てやると、向こうもこちらを見ていたらしく目が合う。アリスはふふと喉を鳴らしている。

なんだかアリスの感覚の適当さというか滅茶苦茶なところで気が抜けた。

別に隠しているつもりもなかったけど。

「オレはマシュマロいっぱい食べたいって祈った。買って」