創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

「好きだ、○○!」の看板(露仗)

個人的おすすめの露仗
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2022/7/5
その看板は一日にして町内に知れ渡った。人々は看板を見るために学校を抜け出し、会社を早退し、各々の足を飛ばした。一枚の看板が立つ道は、あっという間に人が押し寄せ、どうどうと波打った。自分の目で見た者も、噂を聞いたのみの者も口々に言ったことには、これは公開告白だと。
 
看板には、簡潔な一文、見る者すべてに一定以上の衝撃をもたらす叫びが大々的に刷られていた。差出人と言うべきか、その文を残した者の名前はとこにも記されていなかった。
しかし宛先は確りと書かれている。町人はその名前を自身の知人の中から探そうとしたり、自身がその名前でないことを悲しんでみたりした。
 
「あの、露伴先生? もしかしてもしかしないんですけど、あの看板書いたの先生ですよね?」
「ん、康一くんか」
町の反対側で騒動になっているのを知ってか知らずか、露伴は小高い丘のてっぺんで風景デッサンに励んでいた。この人間が町の異常事態に目を光らせて取材と称し当事者になりにいかないのはおかしい。珍しいというより、有り得ない。康一は学校帰りの足で、露伴を探し当てた。訝しがったからである。
どうだった、と露伴が口を切った。対象が世間一般の反応を指しているのではないことはわかっていた。漫画のネタを見つけてはにやにやしている表情も、今は鳴りを潜めて、露伴は至って真面目な顔をしている。特定の誰か、の反応がどのようだったか問うていると察した康一は、彼なりに真摯な答えを返した。回りくどいことをやっている露伴のような人間に恋のキューピット役を申し付けられるのは御免だと、腹の中でダルがっていたわけではない。
「自分で確認するべきですよ。僕には邪推しかできませんし」
「えぇー!」
露伴は駄々をこね始めた。邪推でいいから希望的観測に基づいた結果を聞かせてくれよと宣う。康一は困り顔をした。芝を拳で叩いて腹ばいにせがむ姿に若干引いていた。それに、このヘタレなのか大胆なのか測りかねる漫画家が求めている情報は、詰まるところ自分の都合に適った内容でしかない。康一は再度自ら出向けと助言してその場を後にした。犬の散歩しなきゃだし、塾の準備もしておかなきゃならない。
露伴はみっともなく転げ回っている。
 
なあ、おいと肩を突かれる。このやり方は慣れたあいつだなと、仗助は振り返る。思った通り、億泰が変な顔をして立っていた。自分の知力を超えた出来事があると、奴はこの顔をする。
「よ、億泰」
「おう。…じゃねぇんだよ、多分お前のことだよな…仗助ってお前だよな…」
何か言っている。どうやら頭を使っている様子なので暫く放っておく。ぶつぶつと唱える言葉が尽きたのか、ふと静かになった億泰は、直後耳が痙攣するのも厭わぬ大声で口を開いた。
「ちょっくら見に行こうぜ、今から!」
「どこにだよ、つか何を」
「お前のー…あー、らぶれたー?」
「俺の!? 書いたことねぇけど曝されてんの?!」
「ん…? 好きだ、仗助って書いてあるから仗助が書いたんじゃあなくて仗助に書いたやつか」
「ははぁ、それなら納得…といかねぇなぁ!? みんなが見るところに書いてあんのか? なんで?」
「わかんねぇよ、だからチョウサするんだろー」
「はは、オーケーオーケー」
億泰はまさか女が告白したのじゃああるまい、女は「好きだ」なんて言葉遣いをしないからと考えの浅い結論を出して早々に野次馬と化した。仗助の方はというと、人の好意は無碍に出来ないので丁重に扱う心積もりでいるものの、公開処刑かと疑って已まなかった。聞くところによると名指しでの愛の叫びらしい。俺と同名の別人宛の可能性があるが、他人事と思えない。杜王の仗助くんたちが揃って困惑の表情を浮かべている気がする。
 
結局仗助は野次馬根性で現場に寄った。祭りの後を思わせる哀愁と余熱が漂い、人々は名残惜しそうにある点を見つめていた。
既に看板らしきものは無かった。地面をよく見れば、棒状の何かが突き立てられた跡を誤魔化したのがわかる。それも根拠はないから、人が歩いた跡と言われればその程度である。仗助は帰路につくことにした。用事の方が消えたからだ。億泰はこの件に関して真っ当な野次馬根性を育てたらしく、ぶーたれていたが、仗助が構わず家に向かうと渋々着いてきた。ふたりは家が近い。道路を一本挟めば相手の家にお邪魔できるくらいのご近所である。
本日の不可解な看板事件のことを未練がましく引き摺っていた億泰だったが、家まであと三分の地点で路上にアイスの蜃気楼を見たと言って興奮し、脳内はアイス一色に染まったようだ。ちなみにアイスの蜃気楼というのが理解できる者はあまりいない。仗助もわかんねぇなという顔をした。直ぐに岐路が訪れたので別れた。ひとりになるとアイスが食べたくなってきた。
 
あれ。なんか居るぞ。新聞の勧誘か? 危ない宗教家か?
いや、漫画家だ。露伴がいる。玄関の扉を立ち塞いでいる。
「直接確認しに来た」
仁王立ちする背中から、噂の看板であろう板が覗く。犯人はこいつかと思うと、色々が収斂して成程と思ってしまう。つまり嫌がらせだな?
「言い訳なら聞くんで、アイス奢ってくださいっス」
 
 
 
 
 
 
解説︰

狡いしセコイが解説だ。日頃の行いが悪く、好きだと言っても冗談と取られるかわいそーな露。感覚が狂ってる彼なら町中に認めさせてカップルになるくらいのことはやる。埋める外堀が広い。ただ、ツンデレが彼の特性なので、本人を相手にしてはくっそもどかしい言動ばかり。そんなんじゃあ相手にされないぞ!