創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

開胸

Hは明らかに殺気立っていた。貧乏揺すりが止まらない。ローテブルで向かい合わせに着席しているので、正面で膝が振動し、頬杖をついた口が動いて舌打ちという感情表現をしたり、キーボードを叩く音や手の動きが大振りになってきているのがすべて見える。Sは冷や汗をかいた。恐らく自分のことで機嫌が悪いのでは無い。だが、根拠はない。多分いま行っているパソコンでの作業が原因である。Sは自分の記憶を遡り、パソコンに取り組むまではそう機嫌が悪くはなかったことを思い出そうとした。うん、ごく普段通りで、ガムを膨らませていた。
Sは相手に媚びるわけではないが、機嫌を取るように話し掛けた。顔を下から除く形で上目遣いになり、名前を呼んだ。室内の照明で影になったHの顔は、表情が読み取れないほどにおぞましく映った。なにに対してこんなにいかっているのか見当がつかない。聞いてみたいが、同時に聞きたくないとも思った。怖い。かなり怖い。つと、Hが顔を上げた。照明がその額から、鼻筋を越えて、顎まで照らし出す。表情からは感情が削げ落ちていた。が、身体の周りから放たれるオーラはもの凄かった。
「てめーは勉強したいのか? したいんだよな、勉強したくて堪らないから高校入試の過去問も欲しいんだよな? なあ」
「えっ」
主語が自分であることに酷くおどろいて、Sは言葉を失った。こめかみから冷や汗が伝う。強い眼光に急かされて、正直なところを告げると、Hはふっと憤激を収め、黙った。そのまま何も喋らないので、自分の答えの成否が突き付けられない不安に襲われた。しかしSは問い質す勇気がなかった。あんまり勉強したくないと答えたことが、後にどう影響するのか計り知れない怖さに震えるだけだった。
Hが首を回し、肩を解し、ひとつ舌打ちをした。怒気は気配も無かった。Hの双眸が睥睨するようにSの双眸を捕らえる。
「じゃあ内部システムに侵入して拾ってくるか」
「え?」
このまどろっこしいサイトから内職みてえに過去問落とすのタイヘンだしなあ」
「ちょっ、ちょっと待っ」
「お前には最新の問題をくれてやる」
「それってまさか」
「想像通り」
Hの口角は最高潮に上がっている。とても悪い笑顔だ。にたにたと、Sを見下ろしている。対するSは顔面蒼白で、未遂であるハッキングを想像して震えている。自分が勉強したくないと言ったばかりに、こんなことになってしまった。Sは光の速さで姿勢を直し、シャーペンを握り締めた。手が動かない。解法が見えずに止まっていたのだった。いつになく真剣な面持ちで、唇を噛み、問題とにらめっこしている。
諦めかけたSが顔を上げるのと、何気なく進捗を気にしていたHが痺れを切らすのと、お互いのタイミングがほとんど一致したので、Hの有り難い解説を受けながら、Sはその問題を解くことに成功した。
 
 
pixivで見た幼馴染設定のパクリ。まじでただのパクリ。これはお蔵。
Hに揶揄われてひやひやするSと、地味に感情の安定化にSが抜擢されているHの感じ。どうだろう、私こういうのがヒルセナの定義なのかしらん。
つうか書店で過去問買えよ・・・