創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

中毒気(仗露)

2022/5/25 お互いに強がって面倒くさい事態を彼ら自身が呼び込み築き上げるタイプの仗露

 

 言いだしっぺはどちらだったか。僕も仗助も異論を呈す素振りはなかったし、お互い似たようなことを考えていたのかもしれない。遅かれ早かれ同じ展開がやってきていたであろうと確信に近いものを感じる。

「どうでした、今日? 困ったっスか?」

「全く」

 受話器を通して返事をする。相手の視野内に居るなら声を出さずに誇張気味に首をすくめてノーのジェスチャーをしてやったものだが、仕方ない。一呼吸も入れずに答えた僕を、仗助は即答かよと笑う。空気が揺れた音が電気信号となって僕の 耳元の機器に届く。

そういう君はどうなんだよと切り返すと、僅かに笑いの尾を引いたまま、「俺もそんなにっスよ。予想してたより大したことなかったっつーか」恐らくこいつは空間の斜め右上でも見ているんだろう。今日一日を思い返して脳内に意識を向けているときに表れる、発話の間がある。どのくらいの速度で一日を脳内再生しているのか、あーだのうんだの無意識と思しき呟きを伴って、暫く会話が途切れた。どちらも喋っていないからといって、無音ではない。受話器からは人工的な静寂の音がするし、仮に電話でなく対面していたとしても、無音が指すのは耳を突く閑静ではない。僕はザラザラした沈黙を聴いていた。

「意外と問題ねーんスね。俺もっと露伴中毒かと思ってたけど」

「そうだな」

 急に流暢に喋り出すから肩が跳ねた。始まりも終わりも区別のつかない静音に耳を澄ませていたから受音のキャパシティが狭くなっていたのだ。うるさいから黙っていろと非難してやろうかと一瞬考えたが、やめておいた。命令の理不尽さを慮ったからではない。話を脱線させない有用性を選んだだけだ。

「延長して、明日も続けるか?」

「いいスよ、俺は。露伴は耐えられんの? 恋しくなって学校まで来ちゃったり?」

「うるさいぞスカタン。僕が君に飢えて徘徊するものか。もう切るぞ。偶然を除いて、会わない、会いに行こうとしない。このルールのままでいいな?」

「オーケーだぜ」

 まだ言いかけなのに電話を切られた。語尾のだぜに差し掛かったくらいでガチャンだ。本当、有言実行の男というか、悪意的な行為は嫌なくらいしっかりやり通す。俺も受話器を戻す。

明日どうするかなぁ。放課後、どこかで茶でも飲んで…。財布に金はあったろうか。偶然、たまたま露伴と居合わせたら、一杯奢ってもらうか、露伴が茶か何か飲んでるのを眺めるかしよう。あくまで偶然会ったらの話だ。