きっと一週間前からなのだが、仗助が僕をまじまじと見ては関心を失ったように顔を逸らすことが度々あった。無言でにらめっこを仕掛けているのかと思い、こちらは顔の筋肉を強張らせて応戦したにも関わらず、くすりとも笑わなかった。やはりじっと熱視線を当てて、時間の経過とともにその行為を止めるのである。なんなんだ、と思った。若干の憤りも混じりつつ、その心算を問おうかとも考えた。質していないのは、聞くほどの意味も興味も無いからだ。別に意地など張っていない。
ある日、仗助がこれまでに繰り返したように僕にガンつけてから、思い切った口振りで言った。
「露伴って漫画家なのにあの帽子被ってねぇの」
頭の上で肉まんを掴んだ形の手を作り、あの帽子、とやらをジェスチャーしているらしい。丸みを帯びた形状はどうやらベレー帽である。
僕は視線をきつくした。相手には何の効果ももたらさないようだが。いつものことだ。仗助はへらへらしている。
「お前は漫画を読まないのに漫画家の有名なビジュアルは知っているのか」
トリビアの泉か。漫画も読め。