創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

立つ壁

2022/5/5

 

屋根はない。いつ建てられたのかもわからない。積まれたレンガは目に付くだけでも何か所も欠けて中の地が見えている。壁なのか、塀なのか、この一枚きり残っているのでは判断がつかない。右にも左にも倒れられぬ一枚。立ちっぱなしで疲れないわけがない。離れるべきなのだろうな。地に伏す選択肢のために。可能性を塞いでいるのは俺だから。片方だけでも空けてやれば、この壁は楽になる。確実に。

なぁと気配を尋ねてみる。壁を挟んで向こう側の奴にだ。「自由にしてやるのがいいんじゃないか」と提案する。息づかいが微かに聞こえる。動くつもりはないらしい。何故だろう。奴は、選択の余地が苦しみに変わることもあると呟いて動かない。俺は後ろ手にレンガ質を撫でる。ああ、もう動けない。