創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

ひとり対抗意識に燃える露(露仗)

2022/7/15

 

 面白いことを閃いたんだ。これで必ずあのクソッタレに勝てる。僕はただ絵を描くだけでいいんだ。妙案だろう? 名案だろう? そうそう、発想力がものを言うんだよ。

 まず筆箱からある程度長い鉛筆を出す。自分の背丈を投影した長さの鉛筆が望ましいな。…何も、実寸じゃなけりゃあ認めないなんて言ってないだろう。現にほら、僕が使うのはこれだ。親指の先から人差し指の先を直角三角形の斜辺に見立てたくらいの長さしかない。それにね、実寸大の鉛筆なんてあっても使えないぜ。てこの原理って知ってるだろ?

ああ、話を戻そう。次にもう一本鉛筆を出す。新品か、一本目よりも長いのが必要だ。何故かって、勝たなきゃならないからだ。追い抜くためには追うものがいなけりゃ成立しない。わかるよな?

そしてやることはただひとつ。二本目の鉛筆を、二本目だけを、使うことだ。芯が丸くなって描画しづらくなれば削る。実はこの削る工程が大事なんだ。削ることで短くなるからね、これが勝つためには欠かせない。毎日地道に鉛筆を短くすることで、いずれ一本目より短くなる日が来る。その日が僕の勝利だ。

……どうしたんだい? 小学生以来鉛筆は使ってないから手持ちにないのかい? それなら僕のをあげよう。これも親友のよしみってやつさ、遠慮はいらない。

 なに、この後用事があるのかい。場所は? 君の家なら道中付き添ってもいいよね。家じゃない? そうか、人と会うのか。人っていうかあれだろ、髪の毛お化けの…おっとすまない。無暗に人の風評を荒らす趣味はないよ。うん、じゃあまた明日もここに来てくれよ。

 露伴は一人になった。

暇を持て余して二本の鉛筆を弄ぶ。机に立たせてみたら人っぽく見えた。人形遊びの要領で小刻みにジャンプさせながら色々に歩き回らせる。この距離だと立ち話、もう少し近くに寄れば待ち合わせ、さてその辺をぶらぶらしてみるか。鉛筆たちはかつかつと足一本で跳ねて歩く。どうせ下らねぇ会話をしているのだろう。昨日見たテレビとか、下校中変なゴミ見つけて拾ったとか。

「何やってんの? 暇潰し?」

 ぎくりと動きを止めてそうっと面を上げると、黄色いミミズを見つけて誰かに共有したい奴みたいな表情の仗助が見ていた。奥にはどこかあらぬ所に顔を向けてぼんやりしている億泰もいる。

「邪魔しに来たのか! そうなんだろわかるぞ!」

荷物をかき集めて席を立つ。ドーナツ食いてぇ、とうわ言を零した億泰に鉛筆を二本とも押し付け足早に離れる。仗助の呆気に取られた声が聞こえた気がする。