創作に人生さきとう思うんだ

二次創作ばっかしていたい。

Gみたいな(色松)

夏だから、誰も彼も頭が少しいかれてしまうのかもしれない。いや、いつも狂ってるやつもいるか。

 

 

チョロ松は普段と変わらず、誰に対するものなのか不明な意識の高さ見せつけ行為に勤しんでいた。開く雑誌。中身は求人情報。月給の高いところを、と選り好みが始まるのは必至。結構選び幅があるから一番益の大きそうなものを手に取りたい。

段々と、見ている情報が月給から離れていく。業務内容、時給、所在地、福利厚生、等々。他人事として見るとなんと面白いことか。世界の絶景写真で旅行をした気分になるのとほとんど同じ高揚感を覚え、職探しは今日もどこかへ忘れ去られようという時だった。

部屋にはカラ松と一松がいた。チョロ松はこの顔ぶれに多少の物珍しさを感じたが、何も言わないで自分の業務に入っていた。他でもない、求人誌のパラ見である。

しかし、真面目にやっているチョロ松の前で、暇を持て余したのか、同席の人間の気を引こうと図ったのか、カラ松は甚だ意味不明の言葉を吐き出した。脳回路とか声帯とかいかれてしまってるんだろうと思う。解剖したらなおのこと判然とするはず。

「ゴキブリみたいな字を書くよな、一松は」

突然そう言った、_言ってしまったカラ松は、まず音速で横に吹っ飛んだ。蹴り飛ばされたのだ、一松に。まぁ仕方ない、そうなる。チョロ松は浅く憐れみを浮かべた目をしたが、雑誌から目を離すことはしなかった。

壁に綺麗に人型を残して這い上がってきたカラ松が、まだピンピンしているその息で続きを述べる。

「しかも、クラッシュされたやつだ」

「…」

ただの悪口でしかない。ブチ切れた一松に今にも粉砕されそうになっている。カラ松が。

何を思ってゴキブリなどという嫌悪の王を例えに持ってきたのか理解に苦しむが、本人は悪気が無いといういつものパターン。うん、酷いわ。粉々のゴキブリみたいな字を書くって言葉を褒められたと受け取る人間がどれだけいるだろうか。自分はそれを言われたら嬉しいから他の人間にそれを言ったのか?

 

 

流石に絶命する者が発生しそうな緊迫した空気が張ってきたので仲裁に入る。チョロ松は大分呆れ顔だったがカラ松の非を軽くしてやろうと考えた。カラ松にとっては褒め言葉だから、自分が言われたら喜ぶ言葉を与えただけなのだと締めくくることで、一松のキレ具合を収める手助けにしたいと画策した。

「カラ松はゴキブリ好きだから、ね?さっきの例えは最高の賞賛だから」

「…強引すぎるでしょ…」

僅かに冷や汗を流させることになったが、一松の激烈な憤怒は冷め始めたようだ。ゴキブリで最上級の賛美を表現するって皮肉利いてるわと呟いている。

たしかにそうだ。まず褒めていると伝わることは無さそうだから、早々に語彙を変更することを推奨したい。…推奨じゃだめだな、強制したい。

一松と二人でカラ松の語彙革命の重要性を話し合う。かなり和やかな空気になってきた。一瞬前の死人が出る殺伐とはお別れしたと言っていいはず。…うーん、フラグか?

 

 

「ゴキブリ好きじゃないぞ、全く」

「そうか、死ね」

冷え切った一松の声。カラ松は天高く、太陽の方へ吹き飛んでいった。やっぱり褒め言葉でもなんでもなく、ただ意味のある音声だったあの言葉は、あの言葉がゴキブリであることが災いした。どんまいカラ松。